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日記的空間

主に、私見のために使用するスペースです。 所々、日記的に気ままに書いたりと、アトランダムな使用をしていきます。

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このセカイに意味はあるか:ルール論の観点から分析してみる

鈴川優希さんのブログ「my cube」にこんな記事が上がった。

このセカイに意味はあるか

このブログ記事の冒頭にあるように、もともとは私の作品が叩き台になっていたのだ。
であるならば、私も何か書かねば、と思っていたところ、なんと既に大崎さんがブログ記事をあげてしまっていた。

シュレディンガーの合

先を越されたどころではない。これは急ピッチで書かねばならないのである。


とはいえ、私が書くとすれば、どういうことになるのか。

・堅苦しく
・難解で
・複雑な物言い

の文章になることは想像に難くない。
こればかりは、もう私の特徴だと腹をくくってしまおうと思う。

そこで、「このセカイに意味はあるか」に登場した、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんの主張を理論的に分析するという形式で記事を作るといういつもの流れでやっていくことにします。



1.そもそも無駄合って、理論的にどういう議論対象なの?


だってわかんないんだもん。
定義をすることができるかどうか、という話はよく聞くし、これは無駄合か?あれは有効合か?としばしば議論になっているけれど、無駄合って詰将棋のルールではどういう扱いになっていて、無駄合と認められるとどういう効果があるのか、その部分、もっとちゃんと確認しておかないと、根本的な勘違いしちゃう人出てくるよね。

というわけで、詰将棋パラダイスのホームページのルールを確認してみましょう。

http://www005.upp.so-net.ne.jp/tsumepara/contents/2rule/rules.htm

7)無駄合いはしないようにします。


……うん、さっぱり分からん

いやね、「無駄合って何?」という話はこれからするから良いんだけど、「しないようにします」ってどういう意味だよ。しても良いのか?したらだめなのか?

しかたない、綿貫規約を読もう!


綿貫規約


ダメだ!「総則に対する備考」のところの第2条で「無駄な合駒応手」という言葉があるくらいで、明確に無駄合の立ち位置を確定できない。

わかんねぇじゃん!


仕方がないので、詰将棋メモの「詰将棋のルール-無駄合について」を見に行こう。

詰将棋のルール-無駄合について

ここでは1999年に提案された全詰連の規約案(通称川崎規約案)と2000年の詰棋めいと紙上で提案された山田規約案が一部抜粋されています。


川崎規約案
第八条 [無駄合の除外] 慣習的に無駄とされる合駒(これを<無駄合>と呼びます)をする手は、前各条における応手から除き、手数計算にも含めないものとします。


山田規約案
第八条 [応手の特例] 単に詰方に取られ手数が延びるだけで、その駒を使わなくても詰み、その後の詰手順の内容に変化をもたらさない合駒を<無駄合>といい、第六条の応手に含めないものとします。


ここから分かることは何か。無駄合の中身は詳しくは分からないけれど、応手から除外したり、応手に含めないというものであるということが分かるのである。

なるほど、「応手」というものから無駄合というのは外れるらしい。
では、応手って何?という問題を考えなきゃならないね!

となるとここでは綿貫規約、ちゃんと応手って書いてある。
綿貫規約は古いため時代に合わないところも多いけれど、参考にはなる。

総則第二条に

玉方の指手(応手)は必ず王手をはずす形をとること。

と書いてある。これはうれしい。とても分かりやすいですね。
応手とは玉方の指手のことを言っている。

つまり、無駄合ってルール論においてどのような扱いになるのかがここでようやく分かるのだ。

無駄合とは、玉方の指手から除外される手だということだ。


応手って玉方の指手ってなってるけど、これは「王手を外すことのできる全ての手」を指しているのか「ルール上正解手順となる手」を指しているのかどっちなんだろう。
川崎規約案の8条を見ると「手数計算にも含めない」と書いてある。正解手順から除外されるのであれば、手数計算という話が出てくるのもおかしいですし、ここで言う応手とは王手を外すことのできる全ての手の方だろうと分析可能だ。



2.つまり無駄合ってなんなの?


過去になされた議論の結果を読み解いていくと、王手を外すことのできる全ての手の中から除外されるようだということが分かるので、変化ではないという意味なのかと思いきや違うらしい


詰将棋メモの「詰将棋のルール-無駄合について」では

・無駄合は応手最長の基本ルールの例外規定

と表現していることからも分かる。原則に対する例外、という表現の仕方は
「原則を適用すると○○だが、例外的に~~とする」という意味を持つのであって、応手最長律の例外であるということは、原則として無駄合は最長応手を構成すると考えているはずなのだ。


つまり、変化として一応は考えて、最長応手を決定するけれど、その最長応手決定のときに無駄合を除外して決定しましょう、ということである。


よくわかんないけど、こういうことらしい!
単に応手に含まないから最長応手にならない、では何故ダメなんだろう?わかんない!



3.そもそも無駄合を変化から除外しちゃダメなの?


この論点は、上記のような規約案の考察や透かし詰めに対する考察その1その2から登場したりするものである。
この論点は、おそらく完全に私の独自提案で、他の人の意見を聞いたことがないので、ちょっと聞いてみたいな、とは思っていたりする。

というわけでアンケートを設置しておきます。





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4.「my cube」の4人の理論解析をしてみよう


my cubeにおける例題は以下のように図化することができる


     ┏22玉━12龍━33玉━32龍:D手順(5手駒余り)
15龍━┫(ア)      ┏22玉━12龍━33玉━32龍:B手順(7手駒余り)
     ┗14金合━同龍┫(イ)
               ┗同玉━14金:A手順(5手駒余らず)


A手順とかそういうのはそれぞれAさんBさん……に対応させています。

さて、これまで見てきたように、無駄合とは「変化として一応は考えて、最長応手を決定するけれど、その最長応手決定のときに無駄合を除外して決定しましょう」という形になっていた。よくわかんないけどそうなっていた。

となるとまず(ア)の場面で最長応手を決定するときに14金合が無駄合かどうかが問題となる。

・14金合が無駄合の場合
 14金合が無駄合となると、「応手から除外される」のだから22玉が選択される。つまりD手順だ。

・14金合が有効合の場合
 14金合が応手から除外されるわけじゃないとなると14金合が最長か若しくは駒余らずで最善だ。
 だから、14金合が選択される。そして、(イ)の局面で応手選択をすることになるが、どう見てもB手順の方が長い。
 つまりB手順が選択される。


あれ?A手順にならない

Cさんの理屈を使えばなるにはなる。
2手変長許容というルールを適用して、最長手順はB手順だが、正解手順はA手順になる、という理屈だ。

ただし、2手変長を許容していた綿貫規約であっても「二手延び一駒余りを恕限度とし、これを越えるものは出題不可とする意見が大半を占めた」と書かれているので、2手変長許容ルールを拡大解釈する必要がある


このことから何が分かるか。
背理法からの結論としてAさんは無駄合を各種規約案で説明された枠組みとは別の枠組みで考えているということになる。
応手最善律の枠組みから離れているのか、無駄合は応手から除外するという枠組みから離れているのかはこれから考える必要がありますが……




5.Aさんの理論はどういう理論なのか

Aさん理論でそこそこ分かりやすく書いているのが大崎さんのブログであろう。


・その合駒が無駄合かどうかは、打った瞬間には決まらず、後の手順によって決定されるというのが自分の考えである。


14金合~22玉としたときに初めて14金合が無駄合になるというのである。
これはnono_yさんや三輪さんにも共通するとみられますが「手順」に非常に強く着目しておられるわけである。
これを整理すると

・後の手順を見て、その手順において合駒が無駄かどうかを判定する←どうなると無駄なのかの議論がある
・無駄合を含むことになる手順を除外する←応手決定ルールを書き換える必要がある


応手決定ルールを書き換える必要がある、というところが分からないかもしれません。
一般的に応手を決定するときには

・攻方が最善の攻めをして、受方が最善の受けをするときに、最長最善となる手

が応手決定のルールです。しかし、Aさんの考え方ですと、この「受方が最善の受けをするとき」の「最善」の中に無駄合の議論が侵入してくるのです。



意味が分からない?


じゃぁ、応手決定の際の、「最善」応手の意味を考えよう。


これはもう文献を示すのがめんどくさいので、一般的なそれをガツンと書いちゃうよ。

・手数が長い
・攻方の駒を余らせる

この二つの順番に優先して選ぶと最善だ。
この基準を適用したら、どう考えても(ア)の局面ではD手順とB手順の比較をしてB手順を選ぶのが筋だ
D手順とA手順を比較してA手順が優位になるとしてA手順が選択されることはない

つまり、D手順とA手順を比較してA手順優位という構造にするためには、「最善」の部分に「無駄合」の項目を混ぜるなどして、B手順を除外する構造にする必要がある。
このように手順単位で除外する項目を応手最善律の中に含めるからこそ、初期局面の場面と逆算場面で「最善」が変化するのだ。


結論:Aさんは応手最善律の中に「無駄合」の概念を混ぜるという理論である
※ただし、巧妙にこの結論を回避する枠組みを構築した方に詰蛙さんがいらっしゃいます






6.ところで無駄合って何?


実はまだ、「どうなったら無駄合と判定されるの?」という部分は触れていません。
Aさんの理論においても、どういう場合が無駄合なのかは定義されていません。


ただ、応手最善律に無駄合議論を混ぜない立場から考えたら以下のようになることが分かります。

・14金合が有効合と考える場合
 ・2手変長を許容する→変長作として認める:Cさん
 ・2手変長を許容しない→駒余り不完全:Bさん
14金合が無駄合と考える場合→駒余り不完全:Dさん


何が有効で何が無駄かという議論は、ここまでやって初めて出てくる理論問題であります。
その理論問題も踏み込むと字数がやばいことになるので、今回はこれまでにして、結びに移行します。




7.結びに


今回の例題において「この作品は完全作か否か」という問題設定が一体どういう問題設定だったのか、が明らかになったと思います。

何が無駄合なのか、という問題ではなかったということです。
ここで問題とされていたのは、応手最善律に無駄合概念を織り込ませるべきかどうかという問題だったのです。

というわけで、最後に以下のようなアンケートを置いておきます。
読んでいただきありがとうございました。






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comment

[26] ツイッター見ました

大変興味深く拝見いたしました。
いやあ、難しい。

>つまり、D手順とA手順を比較してA手順優位という構造にするた
>めには、「最善」の部分に「無駄合」の項目を混ぜるなどして、B手
>順を除外する構造にする必要がある。
>このように手順単位で除外する項目を応手最善律の中に含める
>からこそ、初期局面の場面と逆算場面で「最善」が変化するのだ。

つまりこういうことでしょうか。
①可能性のある手順を選んだ結果、A,B,Dが選択肢として残る。
②『応手最善律に無駄合概念を織り込ませる』前提を用い、各手順を『独立』に無駄合いがないか調べた結果、B手順に無駄合が含まれるため、B手順は(手順が見直されることは一切なく)『手順単位で除外』される。
③残ったA,Dで比較した結果、駒余りにならないA手順が採択される

my cube にコメントのある片山さんは、『応手最善律に無駄合概念を織り込ませる』前提でAを主張していると思われます。

私は現在の詰将棋界において、『応手最善律に無駄合概念を織り込ませる』慣習があるとは思っていません。my cube にもコメントしたとおり、そのような作品があれば提示いただきたいところです。
ちなみにこれからそういう慣習を作っていこうという流れがあれば別に止めはしません。

[27] Re: ツイッター見ました

> ①可能性のある手順を選んだ結果、A,B,Dが選択肢として残る。
> ②『応手最善律に無駄合概念を織り込ませる』前提を用い、各手順を『独立』に無駄合いがないか調べた結果、B手順に無駄合が含まれるため、B手順は(手順が見直されることは一切なく)『手順単位で除外』される。
> ③残ったA,Dで比較した結果、駒余りにならないA手順が採択される

この理解で良いと思います。
三輪さんがブログで「無駄合を含む手順を禁止する」とすべきと仰っているので、おおよそこの発想でズレはないと思います。

「手順単位で除外」しているので、応手最善律も「手順単位で選択」するルールに組み替える必要すらあるかもしれません。


私自身も『応手最善律に無駄合概念を織り込ませる』慣習があるとは思っていませんでしたので、my cubeのアンケートでAさん支持が圧倒的になったのはにわかに信じがたいと思っていました。
どちらかというと、無駄合の問題は応手から除外するかどうかを応手最善律と独立に判定するものだと思っていたので、手順単位で除外すると言う話が出てきた瞬間から、それはルールとしてどう組み込むのか、というのは一つの課題でした。

今後の詰将棋界がその流れになるのだとしても、これを初心者向けのルール解説でどう説明したら良いのか、私には検討もつきません。そのあたりがどうなるのか、考えてみようと思います。

[28] 馬屋原さんへ

馬屋原さんの知りたい図は、作意の合駒をしてから変化に行き、合駒不用の変長になる作品の事ですよね。
探せば結構あると思いますが。
『幻の城』第52番は作意の中合後に変化に行ったら変長になっていたと思います。
それから詰パラ本年2月号(結果稿)中学校25三輪作は6手目28玉、25飛、39玉は同手数駒余り。
39玉でなく27桂合、同飛、18玉とすると?
この変化でも27桂合は無駄合と主張出来ますが、馬屋原さんなら有効合と言うと思います。
僕は有効合だと思っています。
27桂合、同飛、39玉が無駄合手順でないなら変長です。

[29] 訂正

馬屋原さんへ
さっきの第52番はもらった桂を使えるから単に逃げたより早詰でした。
すみません。

[32] 三輪さんへ

ご教示いただきありがとうございます。
詰パラ本年2月号(結果稿)中学校25は、完全でよいと思います。

27桂、同飛に対し
①18(19玉)とすれば、27桂は有効合ですが、29飛で同手数駒余りなので問題なし
②39玉ならば、単純に数えると2手変長ですが、この場合27桂は無駄合なので、27桂、同飛の2手分を引いてあげればやはり同手数駒余りなので問題ないと思います。

この場合のポイントは、①②はいずれも変化なので、お互い独立に手数を勘定することができます。一方が有効合でもう一方が無題合でも構わないわけです。

my cube の図面でA手順を完全作とする場合、14金は作意に表れている以上有効合ですので、以降の変化で無駄合と主張するのは厳しいと思っています。


[35] Re:

三輪さんもブログで書いていましたが、変化なら互いに独立に考えても良くて、作意に浮上するとダメ、というのはよく分からない、というのはかなり正当な反論に思いますね。

とはいえ、この27桂合、どう考えても純粋な駒損です。確かに18玉とよろける余地を増やす(変化を増やす)わけですが、増える変化といっても、手数が伸びるわけでもなく、渡した駒を使うわけでもないわけで、これを純粋な駒損と言わずしてなんというのか、というのが正直な感覚。

手数が増えるのならいざ知らず、例えば玉が避けたら頭金1手で、王手駒取ったらすぐには詰まない状況だったら、頭金の変化なんか一顧だにしないはずで、そういう瑣末な変化を捉えて有効だの考えなきゃいけない基準は、理解に苦しみます。
明らかな駒損なんて指将棋でも詰将棋でも読むに値しない手ですし、無駄合がいくら特殊な場面と言っても、何故そんないろいろな要素を見ないといけない基準で判断するんだろう、って思います。


なお、三輪さんは「無駄合の範囲は狭くすべし」といいながら、手順ごとに無駄合かを考えることで、無駄合の範囲を拡大しているというのはまさしく矛盾だと思っています。

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